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有効数字
有効数字とは, 数値の表現において, 誤差を含まない数字
または誤差の影響を受けない数字のことをいう。一般に,
実数の近似値が10進少数で
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(4) |
のように標記され(ただし
),
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(5) |
が成立し, かつ
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(6) |
が正しくないか, あるいは確信できないとき,
数字からまでを有効数字という
iii)。
また, このとき, 誤差を含まない数値の桁数
のことを有効数字の桁数あるいは有効桁数という。
ここで, 例として, 6桁の表示桁を持つディジタルマルチメータで
電圧を測っている場合を考えよう。このような場合, 測定値として
表示される数値はふつうは一定値にはならない。桁が小さい側の数値が
ふらふらと変動することが多いのである。
たとえば, 表示された数値の最小値が,
最大値がであったとしよう。
電圧の推定値をとした場合,
電圧
であるということが測定値の変動の範囲から確信でき,
電圧
となっていることは確信できないから,
有効数字はから小数点を除いたもので, 有効桁は5桁である。
一般に, 誤差が含まれる数値を(1)のように
誤差つきで記録するときには,
の部分に対応する数字を誤差の標記の最小桁に対応した桁まで書いてゆく。
この際, 必要なら零を補う。たとえば, 先に述べた表示された数値の最小値が,
最大値がである例において誤差を
と見積った場合には, 測定値は
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(7) |
のように記録される
iv)。
一方, 表示された数値の変動がより激しく,
その変動が激しい数値を無理して読んで,
最小値が, 最大値がであると結論付けられた
という場合を考えよう。さらに, 電圧の推定値を,
上記の最大値と最小値の平均を取って
四捨五入し, 1.33843 と記録してしまったとする。
このときには, 有効数字はどうなるだろうか。
この場合, 測定値の変動の範囲からは,
電圧
となっていることは確信できない。では最小桁の次の桁は
どうかというと,
電圧
となっていることも確信できない。その次の桁についても同様に,
電圧
となっていることは確信できない。
電圧
が確信できないのも同様である。
唯一確信できるのは,
電圧
という推定のみである。結論として言えることは何かというと,
一見精密な数値 1.33843 の有効数字は最初の1.3のみで, 有効桁は
2桁しかない, ということである。
だから, このような場合に, 測定値を「からの範囲にある」などのように
(ディジタルの表示桁に惑わされて)無理に精密に読み,
また, 測定値を
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(8) |
などのように記録しても,
記録された測定値の大部分には有効数字という観点からは意味がない。
また, この測定値は時間とともにばらついている測定器の読みの
上限と下限を有限の観測時間で見積ったものなのであるから,
という数値がどこまで意味があるかも大変疑わしい。
(8)のような記録のしかたの問題は,
測定値の有効桁と比較して無駄に記録された数字が多いということであった。
そして, この不適切な記録は誤差標記の桁数が多いことに起因していた。
では, 誤差を標記するときに適切な桁数はどの程度だろうか?
実は, 誤差を標記するときの桁数は,
学生実験のレベルではふつうは1桁で十分である。
だから, 本来は, (8)は,
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(9) |
などのように記録されるべきだったのである。
誤差の標記については第1.5節においてもう少し詳しく述べる。
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Shigeru HANBA
平成16年8月16日