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間接測定

測定したい量と一定の関係にあるいくつか の量について計測をおこない, その計測値から測定したい量を求め ることを, 間接測定という。 本節では, 間接測定において 測定値から計算された量に含まれる誤差を見積る問題を考える。

例題として, 抵抗の両端に電圧をかけ, 電圧と電流の測定値から抵抗を求める問題を考えよう。 電圧を$
 V$, 電流を $ I$,抵抗を $ R$ とすると, 抵抗$ R$

$\displaystyle R=\frac{V}{I}$ (14)

によって間接的に測定される。

では, 電圧の測定値に $ \pm \delta V$の誤差があり, 電流の測定値に $ \pm \delta I$の誤差があるとき, 間接測定された 抵抗の値の誤差をどの程度に見積ればよいだろうか?

最も簡単には,

$\displaystyle \frac{\vert V\vert-\delta V}{\vert I\vert+\delta I} \leq R \leq \frac{\vert V\vert+\delta V}{\vert I\vert-\delta I}$ (15)

とすればよい。 だが, この式はやや見通しが悪い。 そこで, より使いやすい式を導くために, $ \delta I$$ I$と比べて十分小さいと仮定し,

$\displaystyle \frac{1}{\vert I\vert\pm \delta I} = \frac{1}{\vert I\vert}\frac{...
...simeq \frac{1}{\vert I\vert}\left (1 \mp \frac{\delta I}{\vert I\vert} \right )$ (16)

と近似するvii)。 (16)を(15)に代入し, さらに

$\displaystyle \vert V\vert\pm\delta V=\vert V\vert\left ( 1\pm \frac{\delta V}{\vert V\vert} \right )
$

とおくと,

\begin{displaymath}\begin{split}\frac{\vert V\vert}{\vert I\vert}\left (1 - \fra...
... )\left (1 + \frac{\delta I}{\vert I\vert} \right ) \end{split}\end{displaymath} (17)

という近似が得られる。 $ \delta V$$ \delta I$$ \vert V\vert$$ \vert I\vert$に比べて十分小さいときは, (17)において $ \displaystyle \frac{\delta V}{\vert V\vert}\frac{\delta I}{\vert I\vert}$ $ \displaystyle \frac{\delta V}{\vert V\vert}$ $ \displaystyle \frac{\delta I}{\vert I\vert}$ と比較すると無視しうるほど小さいから, これを省略すると,

$\displaystyle \frac{\vert V\vert}{\vert I\vert}\left (1 - \frac{\delta V}{\vert...
...eft (1 + \frac{\delta V}{\vert V\vert} +\frac{\delta I}{\vert I\vert} \right )
$

という評価が得られる。 すなわち, $ R$の誤差は

$\displaystyle \delta R \simeq \frac{\vert V\vert}{\vert I\vert}\left ( \frac{\delta V}{\vert V\vert}+\frac{\delta I}{\vert I\vert} \right )
$

と見積られる。

続いて, 四則演算にもとづいて間接測定をおこなう場合の誤差の見積りの 一般的な方法について述べておこう。 測定される量$ x_1$, ..., $ x_n$にそれぞれ $ \pm \delta x_1$, ..., $ \pm \delta x_n$の誤差が含まれ, $ y_1$, ..., $ y_m$にそれぞれ $ \pm \delta y_1$, ..., $ \pm \delta y_m$ の誤差が含まれているものする。 このとき,

$\displaystyle z=x_1+\cdots+x_n-y_1-\cdots-y_m$ (18)

なる式にしたがって間接測定をおこなうときの誤差は

$\displaystyle \delta z \simeq \delta x_1+\cdots+\delta x_n+\delta y_1+\cdots+\delta y_m$ (19)

と見積られる。 また,

$\displaystyle z=\frac{x_1\times \cdots \times x_n}{y_1\times \cdots \times y_m}$ (20)

なる式にしたがって間接測定をおこなうときの誤差は

$\displaystyle \frac{\delta z}{\vert z\vert}\simeq \left ( \frac{\delta x_1}{\ve...
...c{\delta y_1}{\vert y_1\vert}+\cdots+\frac{\delta y_m}{\vert y_m\vert} \right )$ (21)

と見積られる。

さいごに, より一般的な

$\displaystyle z=f(x_1,\ldots,x_n)$ (22)

なる式にしたがって$ x_1$, ..., $ x_n$から$ z$を間接測定するときの 誤差について考えてみよう。 ただし, $ x_1$から$ x_n$には それぞれ $ \pm \delta x_1$, ..., $ \pm \delta x_1$程度の誤差が 含まれているものとする。 関数$ f$の点 $ (x_1+\delta x_1,\ldots,x_n+\delta x_n )$における値をテイラー展開 によって近似すると,

\begin{displaymath}
\begin{split}
f(x_1+\delta x_1,\ldots,x_n+\delta x_n ) \sim...
...cdots
+\frac{\partial f}{\partial x_n}\delta x_n
\end{split}\end{displaymath}

となるから, 間接測定による誤差は

$\displaystyle \delta z \simeq \left \vert \frac{\partial f}{\partial x_1} \righ...
...1 +\cdots + \left \vert \frac{\partial f}{\partial x_n} \right \vert \delta x_n$ (23)

と見積られる。

(23)の誤差の見積りは, 線形近似の精度が十分良ければ, 発生しうる誤差の上界を与える。すなわち, (23)を越える誤差が 発生することはない。 なお, 測定値がいくつかの統計的な条件を満たしているものと仮定すれば, 誤差をより小さく見積ることも可能である([5], [6])。


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Shigeru HANBA
平成16年8月16日